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介護事業者の経営情報報告制度とは、全国の介護事業者が経営に関する情報を定期的に報告する制度です。この制度は、2025年1月から義務付けられます。介護サービスの質を維持し、介護事業者の経営状況を透明化することを目的として設立されました。これにより、国や地方自治体が介護業界全体の状況を把握し、適切な支援や政策を打ち出すための基盤となります。
具体的には、介護事業者は収入や支出、職員の雇用状況、利用者数などを報告し、業界の経営動向を明確にするためのデータを提供する必要があります。
日本では少子高齢化が進み、介護需要が年々増加しています。しかし、介護業界は人手不足や低賃金問題など、経営環境が非常に厳しい状況にあります。倒産リスクやサービスの質の低下が懸念される中、介護事業者の経営状況を把握することが不可欠となり、経営情報報告制度が導入されました。
この制度は、介護サービスの質向上と経営の健全化を図り、業界全体の持続可能性を支えるためのものです。
経営情報報告制度の報告対象となるのは、介護保険制度に基づいて運営されているすべての介護事業所です。具体的には、次のような施設や事業所が報告の対象となります。
これらの介護事業所は、すべて定期的に経営情報の報告が求められます。事業の規模や提供するサービスの種類にかかわらず、適切に報告義務を果たすことが必要です。
報告を求める対象となる介護サービス事業者経営情報は、介護保険法第 115 条の 44 の2第2項の規定に基づき報告を求める内容が定められていますが、医療や障がい福祉サービス関連の事業も行っている場合は、それらの収益や費用の記載が介護サービスと区分されていなければ、医療や障がい福祉サービスの事業分を除外せずに報告できます。
※は、任意記載の項目です。
事業所又は施設の名称・所在地・その他の基本情報
(1)事業所又は施設の名称
(2)法人等の名称
(3)法人番号
(4)介護事業所番号
(5)介護事業所で提供しているサービスの種類
(6)法人等の会計年度末
(7)法人等の採用している会計基準
(8)消費税の経理方式
事業所又は施設の収益及び費用の内容
(1)介護事業収益
①うち施設介護料収益 ※
②うち居宅介護料収益 ※
③うち居宅介護支援介護料収益 ※
④うち保険外収益 ※
(2)介護事業費用
①うち給与費
ア)うち給与
イ)うち役員報酬 ※
ウ)うち退職給与引当金繰入 ※
エ)うち法定福利費 ※
②うち業務委託費
ア)うち給食委託費 ※
③うち減価償却費
④うち水道光熱費
⑤うちその他費用
ア)うち材料費 ※
ⅰ)うち給食材料費 ※
イ)うち研修費※
ウ)うち本部費 ※ 9
エ)うち車両費 ※
オ)うち控除対象外消費税等負担額 ※
(3)事業外収益 ※
①うち受取利息配当金 ※
②うち運営費補助金収益 ※
③うち施設整備補助金収益 ※
④うち寄付金※
(4)事業外費用 ※
①うち借入金利息 ※
(5)特別収益 ※
(6)特別費用 ※
7)法人税、住民税及び事業税負担額 ※
事業所・施設の職員の職種別人員数その他の人員に関する事項
(1)次の職種ごとのその人数(常勤・非常勤別)① 管理者② 医師③ 歯科医師④ 薬剤師⑤ 看護師⑥ 准看護師⑦ 介護職員(介護福祉士)⑧ 理学療法士⑨ 作業療法士⑩ 言語聴覚士⑪ 柔道整復師・あん摩マッサージ師⑫ 生活相談員・支援相談員⑬ 福祉用具専門相談員⑭ 栄養士・管理栄養士⑮ 調理員⑯ 事務職員⑰ その他の職員⑱ 上記のうち介護支援専門員・計画作成担当者⑲ 上記のうち訪問介護のサービス提供責任者
(2)(1)に掲げる職種ごとの給与及び賞与 ※
その他の必要な事項
(1)複数の介護サービス事業の有無
(2)介護サービス事業以外の事業(医療・障害福祉サービス)の有無
(3)医療における事業収益 ※
(4)医療における延べ在院者数 ※
(5)医療における外来患者数 ※
(6)障害福祉サービスにおける事業収益 ※
(7)障害福祉サービスにおける延べ利用者数 ※
報告の対象となる介護サービス事業者は、介護事業財務情報データベースシステム(仮称)を利用して以下の4つのデータを報告します。システムは現在開発中で、ログインには「GビズIDアカウント」といわれるものが必要となります。
アカウントの作成方法や運用方法についてはマニュアルが作成され、2024年秋頃に厚生労働省から公表される予定です。
今回は、介護事業者の経営情報報告制度について解説しました。この制度は、介護サービスの持続可能性と質の向上を目的とし、事業者には毎年の経営情報報告が求められます。報告義務の対象となる事業所には、多様な介護施設が含まれ、正確かつ適時の報告が不可欠です。
報告作業は事業者にとって負担となることもありますが、適切に対応することで経営改善の機会にもつながります。業界全体の健全な発展を目指し、経営情報報告制度にしっかりと対応していきましょう。